2008年3月30日

キリンジ/悪玉(2000)

作詞:堀込高樹
作曲:堀込高樹
編曲:冨田恵一、キリンジ


キリンジの3枚目のアルバム「3」からの1曲です。キリンジは堀込高樹・泰行の堀込兄弟によるデュオユニットです。その高度な音楽性とポップさから「日本のスティーリー・ダン」なんて言われたりもしています。

この曲の主人公はあるプロレスラーです。

彼はいわゆるヒール(悪玉)です。観客からも罵声を浴びせられ、どんなに大暴れしても最後には善玉レスラーにやっつけられて負けてしまう運命にあります。

彼には息子がいます。彼はレスラーという仕事には誇りを持ってはいるものの、一方で情けなく負けてしまう自分の姿を、息子はどう見ているのだろうと気に病んでいました。本当は強い自分の姿を息子に見せたい、でも悪役である自分が活躍する訳にはいかない、そんなことをしたらプロモーターから首を切られてしまう、そんなジレンマとずっと闘ってきたのです。

そんな彼は一大決心をします。一度だけ、自分が現役の間に一度だけ、息子に「お父さん勝ったぞ」といいたい。それを実現させようと。

相手は売り出し中の若い善玉レスラー、本気で闘ったら到底負ける相手ではない。でも、この試合は既に結果は決まっているいわゆる「八百長試合」、始めから負けることが決まっているのです。
で、彼はこの八百長試合をひっくり返してやろうと考えたのです。

ただ、それを思いっきりやってしまっては問題がある、そこで彼は一計を案じました。試合の自然の流れの中でたまたまうまく体重移動をして、偶然フォールしてしまったかのように見せかけて、3カウント取ってしまったのです。

売り出し中の若手に土がついてしまい、面白くないプロモーターは憤慨して席を立つ。
観客は「なんでこんなやつが勝ったんだ」と大ブーイング。

でも彼には見えていました。
父の勝利に目を輝かせている息子の顔が。



と多分にオレの思い入れも入っていますが、こういう歌詞の歌です。

キリンジのファンの皆さんの間では、キリンジの歌詞にはダブル・ミーニングがあるということで深読みされることも多いと聞いています。
でも、プロレスファンのオレとしては、この曲に関してだけは直球ストレートに読ませてもらおうと思っています。
なんか、普通に、ええ話やん、と。

2008年3月28日

松本伊代/センチメンタル・ジャーニー(1981)

作詞:湯川れい子
作曲:筒美京平
編曲:鷺巣詩郎

伊代ちゃんのデビューシングルになります。

伊代ちゃんの曲、と聞いて皆さんは何を思いつくのでしょうか。

伊代ちゃんの曲には尾崎亜美による「時に愛は」といったJ-POPクラシックといってもよい名曲、テクノポップ的な斬新なアレンジの「おとなじゃないの」、ラテンテイストのトロピカルポップ「太陽がいっぱい」など、音楽的に面白い名曲、佳曲が多いです。
にも関わらず伊代ちゃんの歌、と聞いて「センチメンタル・ジャーニー」しか思いつかない、という人は多いのではないでしょうか。それだけインパクトが強かったということだと思います。

曲のタイトルは作詞の湯川れいこが自分が大好きなエルヴィス・プレスリーの有名曲のタイトルから拝借しているものと思われます。(ちなみにデビュー2曲目は「ラブ・ミー・テンダー」でこれもエルヴィスの曲のタイトルです。)

この曲の最大のインパクトは何と言っても「伊代はまだ16だから」という歌詞にあると思います。歌の中で自分の名前と年齢をアピールしているわけです。デビュー曲で一気に自分のプロフィールを世間の人にアピールできるという意味で非常にうまい売り方といえます。
(後にわらべの「かなえちゃん」役だった倉沢淳美がこの方式を大幅に拡大した「プロフィール」という曲でデビューします。この曲ではとうとうサビが「自分の名前の連呼」というところまで行きますが、結果的にはあまり功を奏さなかったようです。何でも、やり過ぎはいかん、ということでしょう。)

そしてこの歌詞がインパクトを持って伝わってくるもう一つの要因として筒美京平の天才的な作曲センスがあると思うのです。

「伊代はまだ(だだっだだっ)じゅーろくだーからー」

サビ前の歌詞としてこの譜割り、そして(だだっだだっ)。

この(だだっだだっ)が間に入ることでこの1行の歌詞にある種のドラマが生まれます。

例えば、こんなフレーズ。

「きょうのおかずはハンバーグ」

「きょうのおかずは(だだっだだっ)ハンバーグ」

「ハンバーグ」というありふれたおかずが圧倒的にドラマチックでゴージャスな存在に変貌しているのです。声に出して言ってみた場合のこの2つに生じる決定的な差をお分かり頂けるでしょうか。この曲で筒美京平は伊代ちゃんの16歳という若さと勢いを、たった音符4つと休符2つで、ドラマチックに演出しています。

筒美京平という人はこういう魔法のようなことを、さも当然のごとくさらりとやってのける人なのです。

鷺巣詩郎のキラキラしたアレンジもアイドルのデビュー曲らしい素晴らしい仕事です。

かくして「センチメンタル・ジャーニー」は伊代ちゃんの代表曲として人々の記憶に残るのでした。

2008年3月27日

松田聖子/ガラスの林檎(1983)

作詞:松本隆
作曲:細野晴臣
編曲:細野晴臣・大村雅朗

聖子ちゃん絶頂期の曲です。
先日iPodをシャッフル中に流れてきて、改めて感じ入りました。

こ の曲、ちょうどカップリング(昔でいうところのB面)がもはやジャパニーズ・ポップス・スタンダードともいえる"SWEET MEMORIES"なので、ちょっと主客逆転な感じもあります。実際、オレ自身も同じ松本隆+細野晴臣作品であれば「天国のキッス」の方が好きだったりし ますが、この曲は曲調がスロウ気味であるため、より聖子ちゃんの「ぶりっこ歌唱法」の真髄をたっぷりと楽しめます。

特徴としては、

・「る」が「とぅ」に聞こえる。(これはある種基本)
・語尾の「しゃくりあげ」と「ため」の絶妙。

あたりが挙げられると思います。

サビの最後の「ガーラースの林檎たーちぃ」のフレーズが上記の2つ目の特徴として象徴的です。
特に「ガー」のところ。

これがプロのアイドルってのもんです。

ここで30秒試聴が可能です。