2008年4月18日

岡田有希子/ファースト・デイト(1984)

作詞:竹内まりや
作曲:竹内まりや
編曲:萩田光雄

またアイドルです。ホント、そんなつもりじゃないんですが。

最近オレの中で流行っている岡田有希子のデビューシングルです。

彼女の名前を聞くと、どうしてもあの衝撃的な事件のイメージばかりが勝ってしまい、アイドルとしての正当な評価がなされていないような気がします。
ただ、当時のアイドルとして正しいルックス、正しい歌唱力、優れた楽曲、一時代を築く可能性を秘めていた人材であったと今更ながら思うのです。

事実、デビュー曲でこの作家陣です。その期待の高さが伺えます。

歌詞は、自分では目立たない存在だと思っている女の子が、クラスで憧れの男子に突然映画デートに誘われてしまって戸惑い&ときめき、という正統・純アイドル路線で、そこに「まりや節」なメロディが炸裂しまくる期待を裏切らない楽曲です。曲はサビ始まり、しかもマイナーコードで入って、サビ明けでメジャー展開するという形になっており、ここでも「はじめ戸惑い、のちときめき」という主人公の気持ちの遷移をうまいこと表現しています。

また、大御所萩田光雄さんのアレンジが素晴らしい。萩田さんは山口百恵楽曲のメインどころの編曲をほとんど手がけていた方で、それ以外にも「超」の付く名曲(久保田早紀「異邦人」、あみん「待つわ」、H2O「想い出がいっぱい」、中森明菜「セカンド・ラブ」などなど)のアレンジを数多く手掛けてきた、まさに大御所中の大御所。オレ個人的には萩田さんの繊細かつドラマチックなストリングスの使い方が好きなのですが、この曲でもそれは顕著で、サビ始まりのところでの低音弦での力強いストロークでドキドキ感を、サビ明けのメジャー展開のところではやわらかいレガートでときめき感を演出し、まりや楽曲の意図を見事にサポートしています。

岡田有希子自身はデビュー曲ですので、その歌唱はただひたすら誠実です。表現という意味で充実してくるのは尾崎亜美楽曲である「Summer Beach」あたりからという気がしています。

彼女のかつての楽曲は今はベストアルバムなどに収録されています。興味を持った方は是非、レンタル屋さんあたりで。



オレは中学から高校の時分にかけて、「勉強しながらラジオを聞く」(ラジオ聞きながら勉強、ではない)というのをよくしていて、たまたま彼女の番組も何となくではありますが、毎週聴いていました。

ある日、ちょうど「くちびるネットワーク」が大ヒットしたころ、彼女はラジオで次の新曲だといって「花のイマージュ」という曲を紹介していました。東芝の扇風機のCMで流れるという話もしていました。
当時オレは「ふーん、新曲ね」という程度のスタンスでその曲を聞き流していました。数日後、あの事件が起こりました。「花のイマージュ」という曲はお蔵入りになったようですが、「花のイマージュ」という東芝の扇風機は何事もなかったように売られていました。



存命であれば彼女は現在40歳、どうなっていたのでしょうか。
何となく、ドーンと売れて、結構さくっと結婚・引退して、幸せに過ごせていたんじゃないかと、そんな気がします。

2008年4月2日

中森明菜/難破船(1987)

作詞:加藤登紀子
作曲:加藤登紀子
編曲:若草恵

明菜ちゃんの文句なしの代表曲の一つです。

この頃の明菜ちゃんはもうアイドルではない立派なシンガーとしての地位を確立していく一方、当時交際していたマッチこと近藤真彦との破局が囁かれていた、といった時期でした。
その時期に、まさに何というタイミング、この運命的な曲との出合いを果たすことになるわけです。

静かに始まるイントロからぐっと曲の雰囲気に引きずり込まれます。

歌詞中に何度か出て来る「海の底」「沈む」という言葉、この曲の作者である加藤登紀子さんはおそらく、「川沿いの岩の上に立つ美しい少女に魅入られた船乗り達は次々と川の渦に巻き込まれて沈んで行く」という「ローレライの伝説」をイメージに取り込んで詞を書いたのだろうと思います。

 おろかだよと 笑われても
 あなたを追いかけ 抱きしめたい
 つむじ風に身をまかせて あなたを海に沈めたい

主人公の女性は目標も帰る場所も失った、という点で「難破船」です。
男性を「船」に、女性を「港」に例える日本演歌的なステレオタイプを転倒させているところが新鮮です。

また一方で、愛する人を失うくらいならいっその事その人を海の底に沈めてしまいたいと考える点で「ローレライの少女」でもあります。何故かヨーロッパというよりも日本の怪談噺的なウェットな情念が伝わって来るあたりが、人によっては「怖い歌」という風に受け取られる所以かも知れません。

「船」と「少女」という構図的に対立している対象の両方を主人公の女性に重ね合わせて悲劇的なイメージを構築するなんて、加藤登紀子さん、さすが、といった感じです。

歌のラストはこんな歌詞で締めくくられます。

 たかが恋人を なくしただけで
 何もかもが消えたわ
 ひとりぼっち 誰もいない
 私は愛の難波船

当時の明菜ちゃんの心情を考えて改めてこの曲を聴くと、なんとも痛ましい気分になってしまいます。
それと同時に「人馬一体」ならぬ「人歌一体」の凄みに引きずり込まれずにはいられません。

そう、この曲のキーワードは「引きずり込まれる」です。

2008年4月1日

JUJU/ナツノハナ(2007)

作詞:はしもとみゆき
作曲:谷口尚久
編曲:CHOKKAKU

ちょっと新しめの曲です。JUJUは2004年にメジャーデビューした女性シンガーソングライターで、現在はニューヨーク在住だそうです。この曲は自分では書いていません。

ピアノのイントロで静かに始まるこの曲、歌が始まるAメロに入るところで絶妙に切ないコード展開を見せます

で、その切ない感じのところに「君がいないとー」という歌詞が続きます。

切ないコードのところで「君がいないと」と来たもんでオレは「ん?」と耳が立ちました。
この時点で曲の作り手としては「勝ち」なのかも知れません。少なくともオレに対しては。

非常にキャッチーな作りだな、やっぱり「つかみ」って重要だなぁ、と改めて感じ入りました。

歌詞全体のテーマは「愛する人の喪失」で、その「喪失」が実際にどういう類のものなのかは歌詞の中では明確に限定していませんが、CHOKKAKUさんのストリングスを効果的に使ったアレンジが、きっとその「喪失」が二度と戻らない類のものであることを物語っているように思います。歌詞の持つ意味をアレンジが補足している感じです。

そもそも、この曲を知ったのはちょっと前にやってた深夜アニメ「モノノ怪(もののけ)」でエンディングテーマに使用されていたのを聴いた時でした。
この「モノノ怪」というアニメ、ちょっと変わっていて、アニメというより極彩色の和紙で出来た紙芝居のような映像で、古典的な妖怪や怪談を題材にしたお話しが繰り広げれられます。

こんな
感じ。

オレが見たときは確か「座敷童子」のお話で、何かちょっと切ない感じのラストでした。
その後にこの曲が流れてきたので、余計に印象に残ったのかも知れません。

歌詞の中に「瞬間が永遠だった」という言葉が出てきます。(この歌詞の切り取り方は、全体の流れからするとちょっと不自然ではありますが)この辺がこの歌のキモなんだと思います。
比較的ありふれたフレーズではありますが、聴く人を一旦歌のドラマの中に誘い込んでしまえば、有効だということなのでしょう。

やっぱり「つかみ」って重要です。